青森山田高校サッカー部 公式サイト

　日頃、誰もが忘れているもの。誰もが気付いていないもの。誰もが意識していないもの。誰もが感じていないもの。地位や役割が変わると薄れていくもの。勝者になると薄れていくもの。少し評価されると薄れていくもの。 　寂しい現実ではあるが、それは『感謝の心』である。 　今の自分が発展しようと無我夢中になっているとき、困難に耐え苦しんでいるとき、道が途絶えて迷っているとき、温かい手を差し伸べ、導き、自分を救ってくれた人が必ずいるはずだ。そんな大切な人のことを忘れてはいないだろうか。誰の世話にもならず、自分一人で生きてきた者などこの世に存在しない。毎日のようにお世話になっている状況にも、それが長く続くと当たり前のように錯覚し、勘違いし、態度が横柄になることや、礼節を怠ることはないだろうか。絶対に忘れてはいけないのは、両親や上司、恩師や友人、今の自分はそんな人たちに成長させていただいたという事実だ。 　人は忘れる生き物である。しかし、自分の身に起きた悲劇や、人の為にやってあげたこと、人に貸したものについては絶対に忘れないだろう。逆に人にお世話になったことや、人にやってもらったこと、人から借りたものは簡単に忘れてしまうものだ。人それぞれ責任感の大きさに個人差はあるが、そのギャップが大きければ大きいほど世間から良く思われないことも、周囲から評価されないことも、多くの人はよく理解しているはずである。それでも人は忘れたり薄れたりしていくものである。 　『初心を忘れるな！』という言葉は、『思い悩んだあの時代』を、そしてお世話になっている『周囲の人たち』の存在を忘れるなという、自身が成長するためにとても重要な言葉だったことに改めて気づく。 　『感謝の心』は口で現わすものではない。時には、また状況によっては、『ありがとう！』の一言で救われることも大いにあるだろう。本当に心から感謝している人は、日頃の行動が変わるし発言も変わる。いくら口で感謝していると言っても、その人の行動がすべてを語っているのである。 　スポーツでも同じようなことがいえる。プレー中、自分の思い通りにいかなければ、『彼のプレーとは合わないから』『俺は彼よりも頑張っているのに』『彼が俺にパスを出さないから』そんな自己中心的で自分勝手な発言を耳にすることがある。どんな時もネガティブな発言でひたすら不満を漏らす。自分の失敗は全て人のせいと言わんばかりの言動や態度が周囲に悪い影響を与えていく。もちろんそんなタイプの選手が周囲の空気を読める訳もない。自らが変わる、自らが歩み寄ることによって解決する問題はいくらでもある。それが相手を理解することや、自分を知ってもらうことにも繋がるのだ。スポーツをやっている者は、是非『歩み寄る心』そんな前進的な心を大切にして欲しいと思う。そして、常に今の自分が好きなスポーツをやれているのは、いつも全力で支援してくれている親がいて、どんな時も一緒に活動してくれる仲間がいるからこそ、今の自分があるという『感謝の心』を忘れてはならない。 　『身体的成長』は、幼少からの生活環境や遺伝、食事等によるもので、なかなか変えられないのが現実である。しかし『精神的成長』は、家庭環境や親、先生、仲間がそのようにしたのではなく、全ては自分の選択や欲求がそうさせたということを認識する必要がある。友人と上手くいかないことも、先生や指導者と上手くいかないことも、活動が上手くいかないことも、思い通りいかないことも、全て自分自身の選択であり、自分自身がそのようにしているということを忘れてはならない。自分自身が度々作っている『心の壁』。何の解決にも繋がらない『大きな壁』を、しっかり積み上げているのは自分自身であるのにも関わらず、周囲が解決してくれることを心のどこかで願っている。そんな『自分勝手な欲望』が見える。 　『成長できない理由』それはそこにあるのではないだろうか。