青山学院大学サッカー部オフィシャルサイト

1995年入学 中村武彦さん (Blue United Co. )

 

第5回は前回に続き、ニューヨーク在住、スポーツマネジメントで日本とアメリカの架け橋となるべく活躍中、ブルーユナイテッドCEOの中村武彦さんです。

著書:

「MLSから学ぶスポーツマネジメント〜躍進するアメリカサッカーを読み解く(東洋館出版)」。
受賞等:
2015年UMASS「Alumni on the rise Award」
2017年東京ニュービジネス協議会 「国際アントレプレナー賞」
2018年及び2019年SPIAアジア「年間最優秀国際スポーツイベント賞ファイナリスト」等
2019年サッカー本大賞

【Q4:卒業後の就職先であるNECの海外勤務を離れて、新しいチャレンジをする想いを持つようになった契機、出来事は何ですか?また、どのような決断をされたのですか?】
自分と同世代に中田英寿というスーパースターがいました。その選手は自分と同じ時期にサッカーを始めたにもかかわらず、僕がN E Cのサラリーマンをしていて、満員電車の中で疲れているときにイタリア、セリエAのペルージャというチームで派手にデビューをしました。その新聞記事を読んだ時に感じた「この差は一体なのだろうか?」という疑問。
N E Cでアメリカに出張に行くたびに感じたアメリカ人の仕事に対するエキスパートとしての感覚と、日本人のなんでも浅くできるけど深い専門家ではないジェネラリストの働き方の違いを目の当たりにして感じた「自分は何の専門家なのだろうか?」という疑問。
N E Cで渡された資料は読むと寝落ちし、会議に興味が持てないという落ちこぼれ社員な自分は、自分の興味のあることを仕事の対象にできたら苦に感じたり、仕事をさせられていると感じず、むしろスーパーサラリーマンになれるのではないかという(甘い)気持ち。
アメリカに出張をした際に初めて観戦しに出かけたM L Sの試合で、北米リーグ倒産以来またプロサッカーリーグがアメリカにできたのだ、という感動と、自分が育ったアメリカで、サッカーで働けないものかな、という(甘い)気持ち。
当時日本にはまだ存在しなかったが、アメリカには学問として1966年より存在していた「スポーツマネジメント」という存在を知り、留学をしたい!と考えた気持ち。
これら全てが積もり、最後は「やらずに後悔するよりやって後悔しよう」「諦めるより信じることに懸ける」という座右の銘に従い、あまり深く考えずに楽しそうだから!と、思って飛び出しました。

【Q5: 大学時代に話題を移しますが、青学サッカー部で心に残るエピソードを教えて下さい。】
自分の人生において最も輝いていた時代の一つだと思います。あの当時の仲間は学年関係なく、今でもよく集まりますし、当時を彷彿させてくれます。現監督の流郷吐夢さんも一つ上の先輩でお世話になりましたし、現コーチの清水厚くんは後輩でした。当時のサッカー部は今より人数が少なく(各学年10〜15名程度)、すごく密度の濃い時間を過ごしたチームでした。一番感心したのは「サッカーの上手、下手」以外の価値観を皆がしっかりと持っていたこと。大人のチームだったなと感じています。
当時、サッカー部に入部できる人数が少なかったこともあり、学連や主務などの学生スタッフは選手兼任でした。そんな中、何も知らない自分がサッカー部に入部するために練習場を訪れた際、当時学連をしていた先輩に「サッカー部入るのは難しいんだよね。でも、どうしても入部したいのなら学連という役職に就けば優先的に入部できる。俺の学連という役職を引き継いでやろうか?」と言われて、何も知らずに学連をやることになりました。もちろん、他の同期はそんなことなく普通に入部していました。そして、僕ももちろん似た手法で何も知らない新人後輩に学連のポジションを引き継ぎました。これも伝統というものですね
心に残るエピソードは数えきれないほどあります。1998年はとても強く、1部昇格も目前でした。そんな中、総理大臣杯、快挙で決勝戦まで進むことに。しかし、主務であった自分は大会遠征予算を準決勝までしか組んでおらず、決勝戦前に急遽O B会に相談をさせていただき、決勝戦までの神戸での滞在費を急いで捻出していただけたエピソードは今でも忘れません。また、自分たちは人数が少ないのでものすごく仲が良かったです。卒業2年目に仲間の一人で副将・雨宮達宏の突然の訃報に驚きました。今でも皆で、彼の誕生日には連絡を取り合っています。
さらに、伝統というと「新人戦で全敗すると全員丸坊主」がありました。1年生の時は全敗し、部室で3年生以上がバリカンを持って待機していたことを思い出します(流郷監督も坊主に)。2年生の時はこれに勝てば坊主にならなくて良いという大切な試合が、天皇杯と重なり1、2年生の主力は天皇杯に出場。あれほど必死に試合したことは後先ないというほど頑張りました。その試合は勝利して天皇杯の会場で朗報を待つ同期たちに「坊主なし」を伝えました。

【Q6:大学サッカーだからこそ出来たこと、大学サッカーを選んで良かったことは?】
よく言えばすごく自主性を重んじる部活で、悪く言えば放任。だからこそ、とても考えて行動する力が養われた気がしています。予算組から、部則から、自分たちで話し合いをよくしたし、助けあったし、悪企みもしました。同期主将の北慎(現F C東京U15むさし監督)は迫力満点で、それを主務の僕がフォローする、という型式でした。実際、就職活動では「大学の体育会で得たことは?」と聞かれて「頭も筋肉です」ではなく「考動力です」と即答できたのも多くの困難に自分たちで考え対応してきた成果だと感謝しています。

【Q7:大学の後輩たちへのメッセージをお願いします。】
「たかがサッカーです」。サッカーが上手くてもプロになれない限り何の自慢にもなりません。プロになれない限り、「選手」として生きていくこともできません。
でもサッカーを通して得られる仲間や出会いは一生の宝です。そしてそこから学ぶこと、刺激を受けること、視野が広がることはたくさんあり、それが人生を豊かにしてくれます。サッカーに携わる仕事も今の世の中はたくさんあります。
自分は中学校までがサッカーのピークでした。サッカーの街、町田で東京都3連覇をしたのが最後、青学では「下手」な部類の選手でした。でも、楽しかったです。そこでの仲間は冒頭でも話したように今でも集まる一生の友達です。同じ時期にプレーをしていなくとも同じ青学の同窓生ということで知り合いになる方も数えきれないほどいます。
そしてサッカーに真剣に取り組んできたからこそアメリカで学び、バルセロナに渡り、トリノ、ザルツブルグ、マドリーなど数えきれないほどの国に行くことができ、友達ができ、仕事に恵まれることになりました。
後輩の皆さんはサッカーを真剣に楽しんでください。並行して勉強もたくさんしてください。ここでいう勉強は必ずしも教室での勉強に限りません。好きなことは勉強している気にもならないし、どんどん詳しくなります。それをさらに追求してそれで生きていけるようになったら良いですよね?
1日(24時間)を約100歳と考えたら、1時間が約4年間に相当します。そう考えると皆さんはまだ20歳前後なので、朝の5時です。起きてもいませんね。それだけ夢の中でサッカーができる。夢中になれるということです。好きなことを勉強できるということです。精一杯楽しんでくださいね。
 

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