「飛躍」するための条件
3月、全国の高校生が卒業を迎えた。日本には「卒業おめでとう!」の一言に三年間の「頑張り」を集約させる風潮があるが、卒業生の心中はちょっと違うのかもしれない。人によってそれぞれの旅立ちはあるものの、三年間で得た「成果」や「達成感」を自らの勲章として胸を張って旅立つ者と、そうでない者の面持ちには大きな違いが見られる。「悔い」を次なる一歩、「飛躍」の原動力とし、経験を活かすことができるのであれば、それはそれで三年間の素晴らしい「成果」と言えるだろう。
高校サッカーを25年間指導してきた中で、選手の成長について気づくことがある。それは著しい成長を遂げて何らかの「結果」や「成果」を残した選手と、際立った変化もなく「平凡」に終わった選手の思考や行動には大きな違いがあり、そして、期待に応えられなかった選手の行動や性格には同じような特徴が見られたのだ。
先生や指導者の話を素直に聞くことができず、物事を前向きに捉えることができない性格で、何事に対しても実行する前に言い訳し、失敗したら直ぐに弁解するというネガティヴな姿勢や態度は、成長できない選手の典型だ。すべての行動が漠然としていて計画性がなく、その上、人に指摘されることを極端に嫌がるので同じミスや失敗を何度も繰り返すのである。目的と手段、行動が一致していないのも特徴の一つで、自分が頑張っていることにはとても満足し評価するが、他人の努力や頑張りにはあまり興味も関心もない。そして、どんな時も行動や発言が自己中心的なので、周囲からは理解も評価もされにくいのが現実である。「好きなこと」や「得意なこと」には熱心に取り組み、それを「努力」とはき違え、「苦手」なことには向き合わず逃げてきたので、結局、何も達成できていないことが多いのだ。残念だが、これが成長できない「落ちていく」選手の現状である。
一方、自分の掲げたイメージ通りに目標や目的を達成させることができた選手、また大学に進学してから「大きな夢」を叶えた選手の思考や行動は、他と比べ何が大きく違っていたのだろうか。
「結果」や「成果」を残してきた選手は、周囲から多くのことを学ぼうとする意欲があり、どんなわずかなスキルでも獲得したいという積極的な行動が多く見られていた。あらゆる苦難にも屈することなく、冷静に状況を判断し、具体的に行動できる優れたメンタリティーを持った選手が多かったと言える。具体的に行動することで、「成功の要因」も「失敗の原因」も、自分の中で明確に理解され整理されていることが、また新たな目標や課題に挑めるということに繋がってくる。そして、自分自身が日々感じている「苦手」や「ウィークポイント」に対して、努力や鍛錬を惜しまず、徹底して改善を求め続ける「根気強さ」や「忍耐力」が、自らの成長に欠かせない重要なスキルであり、「甘え」や「誘惑」に流されることなく、自分の決意や意志をとことん貫き通すことが成功の秘訣であると言える。よって「性格」も欠かすことのできない一つの「重要なスキル」として自分自身に置き換えてよく考えてみることが大切だと思う。
サッカー部の卒業生で、スペイン1部リーグ・ヘタフェで活躍する柴崎岳は高校時代に、中・高生の多くがカラオケやゲームなどの娯楽に興味を持つなか、「プロサッカー選手に歌唱力は必要ありません」とサッカーのみに集中する強い信念を語っていたことを覚えている。「何かを得る」ために「何かを犠牲」にできる「強い精神」こそが、「成功」への大きな一歩になると信じていた。
全国の高校生諸君が、誰よりも大きな「成功の花」を咲かせてくれることを期待している。
2018/03/29 11:06