青森山田高校サッカー部 公式サイト

青森山田高校サッカー部
監督 黒 田  剛
「チャンピオンシップ初制覇」に思う
 2016年12月11日、辿り着くことなど絶対に不可能だと思っていた頂(いただき)、プレミアリーグEASTの「優勝」がついに現実のものとなった。最終節までもつれた優勝争い。FC東京U–18との直接対決を1−0と勝利したことで、今年一年間のリーグを締めくくるこの上ない最高の結果で終了した。そして続く17日、その熱や勢いも冷めやらぬ中、埼玉スタジアム2◯◯2で行われたチャンピオンシップ。WESTで「優勝」を果たした、サンフレッチェ広島F.Cユースにも勝利し、見事「初優勝」というかたちで、悲願の『日本一』を達成することができた。一年間を通してよく努力し、よく学び、よく成長した選手たちに心から感謝の意を表し、素晴らしい快挙であると称えたい。
 豪雪地域、青森の高校サッカーチームが、高円宮杯JFAプレミアリーグEASTにおいて「初優勝」を果たし、しかも『全国制覇』まで成し遂げたのだ。高体連のチームが過去6大会に一度も降格することもなく毎年出場し続けていることは、ある意味「奇跡的」なことで、一般的には「あり得ない」事例なのである。
 プレミアEASTのJユースといえども、過去の大会においては、FC東京U–18や浦和レッズユース、東京ヴェルディユース、北海道コンサドーレ札幌U–18、そして今回降格したアルビレックス新潟U–18など、Jの下部組織ですら何度も降格を経験しているほどのレベルの高さだ。現状を維持することがどれほど難しいリーグであるか容易に想像できるだろう。
 長年にわたり、我々青森山田高校サッカー部が実践してきた雪国サッカーの方向性や、指導理念・指導方針が具体的に証明され、指導環境の是非を結論付けるに「最高の結果」となって現れた。チームスタッフ、選手、関係者が「この日」が来ることを信じて必死にやってきた、その思いがついに報われた瞬間だった。
 全国4489チーム(約18万人)が加盟し参加するこの大会は、高体連サッカー部や、Jクラブ、地域クラブが一堂に会し行われるユース年代最高峰の大会である。スキルの高い選手であっても、エリート集団であっても、カテゴリー別の日本代表選手であっても、まだまだ足りないもの、育成期に会得しなくてはならないものが何であるのか、選手たちが身をもって「証明してくれた」と言っても過言ではないだろう。
 近年、日本代表の国際Aマッチは、国民的行事として大いに盛り上がり、「Jリーグ」がサッカー少年の「憧れの職業」となった。指導者たちにとっても日本代表選手を育成し、輩出することは一つのステータスといえよう。
 育成年代、Jクラブ人気に押される中で、「エリート集団」には負けるわけにはいかないと必死に頑張ってきた高体連の指導者たちが全国各地にいる。明けても暮れてもサッカーの指導に時間を割き、情熱を注ぎ、家庭をも犠牲にしながら、年中無休で選手達と向き合い、共に夢を追いかけてきた全国の高校サッカー指導者たちである。結果を残すことができた今だからこそ、全国に伝えてなければならないことがある。それは「なぜ?」を考えてみて欲しいということだ。
 「高校サッカー」は、教員監督が「授業」はもちろん「担任」「分掌」「清掃」「職員会議」「行事」などさまざまな業務のかたわら、教育の一貫としてサッカーを指導・育成する「部活動」で、もちろん学校では「先生」と呼ばれ、殆どが指導ライセンスはあるにしてもアマチュア指導者である。給料も公務員並みの給料で、勝ったからと言って特にサッカーで得る報酬などはない。強豪校であっても、Jクラブのユースチームに昇格できなかった選手や、その他街のクラブ、中学からの寄せ集めで組織され、活動・強化費は後援会費、部費、保護者の負担が基本的な運営資金となる。一方、「Jクラブ」は、プロの指導者が各カテゴリーに配置され、サッカーの専門指導に従事する。指導者としてクラブとプロ契約を交わし、ある程度の高額年俸を稼ぐ。そして育成強化費として、「Jリーグ」から数千万の分配金が支払われ、それを基盤に活動・運営している。選手層は厚く、下部組織からの昇格組と全国からスカウトした選手、まさに「エリート」で組織されている。
 では、これだけ活動費や指導・育成環境に「違い」があり、所属選手のレベルに「差」があるのに「なぜ?」高体連チームが勝つことができるのだろうか。本来であればチーム間のレベルは「圧倒的な差」となっていたとしても仕方ないはずだ。そこを問う者が増えなければ、日本のサッカーが大きく発展することはないと思っている。
 極論、「教育」なくして「育成」なし、「情熱」なくして「成長」なし、ということになるだろうか。『指導のプロ』に勝るのは、『教育のプロ』であることが容易に理解できるだろう。スタート時は大きくリードされていても、この「教育の差」や「経験の差」がその距離を「縮め」三年かけて「追い付き追い越す」のだ。
 「教育者監督」は、選手をあらゆる角度から「伸ばす術(すべ)」を熟知している。これは育成環境やシステムの問題であり、決してJクラブが悪いということではない。「育成期」はサッカー以外の多方面から選手に「アプローチ」していくことが必要だし、それがサッカーを「伸ばす」ことにも大いに繋がっているということだ。心を育て、逆境に強い選手を育成する。
 「エリート」は「高体連」で鍛えられた方が将来的には面白いのではないだろうか。(笑)
2016/12/27 11:41
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