人生を豊かに(監督 末岡龍二)
この聖カタリナ大学サッカー部のホームページが立ち上がったのが2017年7月。部員にブログを書くことを強制したのは、文字にすることで自分の思いや考えを整理でき、それを全部員と共有することによって重要なコミュニケーションのツールとして使用してもらう意図が私にありました。が、、書かせてみると予想通りやらされている感満載の文章。。。(苦笑) 最近は徐々に内容も進化していますが、ここで私がバシっと自分の思いを綴りたいと思います。
選手を引退して4年。指導者として大学生に関わるようになってから3年が経とうとしています。私のサッカー人生をざっくり説明すると、小学生で全国出場、中学校で停滞、高校は同好会で好きなようにプレーし、一般受験で入学した大学では年々カテゴリーを上げて3年次にまさかの日本一、そしてプロの世界へ。プロ生活では、Jリーグでいまいち、シンガポールで少し結果が出て、タイで引退を決めたが(当時30歳)、インドで奇跡の復活。インドでは6年間プレーし結果も出たので、周りの人たちは末岡=インドのイメージが強いようですが、留学や旅行でヨーロッパもけっこうまわって30か国近く足を運んで楽しい人生を歩んでいます。
前述の通り私は今サッカーというスポーツを通じて大学生と関わっていて「どうしたらサッカーうまくなるのか」「どうやったらチームは強くなるのか」「やる気出せ」と日々試行錯誤しながらつい最近まで選手だった素人が指導者っぽいことしています。私の願いとやるべきことは一つで今関わっている大学生に「人生が豊かになり幸せになってほしい」それだけです。そのための部活であり、そのための大学生活だと思っています。私は元々賢い人間ではないので日本にいるだけでは気づけないことがたくさんあり、いろいろな国に足を運び違った文化に触れ、さまざまな人種の人たちと話すことによって「気づき」を得てきました。そこで気づいたのは、日本人は物質的に恵まれているということです。ただ「物質的に恵まれている=幸せ」というわけではないのです。
インドでは1950年にカースト制度(身分制度)が廃止されましたが、実際その意識は根強く残っています。例えば若者の進路は、医者の子供は医者に、タクシー運転手の息子はタクシー運転手に、売春婦の娘は売春婦に、、、タクシー運転手の子供は医者にはなれません。逆も然り。このような現実がインドでは(良くも悪くも)残っています。一方、日本の若者は将来への選択肢は無限大で、挑戦できる環境がそこにあります。「夢を持とう」とか「夢って素晴らしい」などのフレーズをよく耳にしますが、まずは夢を持てること自体が幸せなことだということをインドに行って学びました。私がインドで雇っていたメイドの子供は大学生。月給1万5千円でどうやって大学に通わせるのか聞いたところ、親戚中の人たちがそのメイドのひとり息子にお金を出し合い大学に通わせ、卒業後IT系企業に就職して将来養ってもらうとのこと。IT企業はカーストは関係ない職種です。
一見このインドの話は不幸そうですが、カーストが身近にあるにも関わらずインド人の大半はパワーがあり楽しそうに生きています。そこがまた興味深く、外の世界に魅力を感じる理由です。サイパン出身の部員は積極的に監督である私の車の助手席に乗ってコミュニケーションを取ろうとしますし(大半の日本人部員はそれをなるべく避けようとする、笑)、韓国人の部員は大学卒業したら自国を守るために2年間軍隊に行くことを自覚しています。世界ではいろいろな立場・さまざまな価値観があります。さらなるグローバル化が進む現代において、小さなコミュニティーではありますが聖カタリナ大学サッカー部も国際色豊かにすることの意義は大きいと思っています。
私も今3歳の双子の子供がいますが、彼らが成人になるころには65%が今存在しない職種に世の中は変わっているようです。変革の時代です。そのような時代に適応するためには、若いうちに多様な価値観に触れておくことが重要です。私も今関わっている大学生や周りにいる方々(子供から大人まで)からいろいろな価値観を提供してもらっています。この環境は私の人生をさらに豊かにし、幸せにしてくれると確信しています。
聖カタリナ大学サッカー部監督 末岡龍二
2019/04/28 02:44