「自分の家、あれです。」私の大学サッカーは、こんな自己紹介で始まった。初めて練習に参加した日、監督の元へ挨拶に伺うと「お前、家近いらしいな」と言われ、自分の家を指差した。なぜ知っているのか疑問に思ったが、高校の先輩が先に自分を紹介してくれていたのだろうと察した。
青学サッカー部創立以来、監督やコーチ、グラウンドの管理人さんにまで実家を知られ、しかもグラウンドから見える位置に家があるという方がいたらぜひ教えて頂きたい。おそらくいないだろう。
こんにちは。教育人間科学部心理学科2年、遠藤風士です。部員ブログがついに自分達の代にも回ってきてしまったかと思っていましたが、こんなにも早く指名されるとは思っていませんでした。自分自身について文章でまとめる機会は、大学受験の志望理由書以来で久々なので、拙い文章だとは思いますが、最後まで読んでいただけたら幸いです。
話を戻しますが、私の家はサッカー部が活動している緑ヶ丘グラウンドから徒歩1分、距離で言うと30メートルくらいのところにある。朝練開始の7分前に部員に電話で起きてしまったことがあるが、余裕で間に合う距離だ。これ以上ない最高の環境で大学サッカーに打ち込めていると思う。遠方から来ている部員は駅近辺で一人暮らしをしているが、私は実家暮らしであるため、負担も少ない。この環境でなければ、サッカーを続けるという選択をしていなかったかもしれない。とても贅沢な発言だとは思うが、入部前、サッカーをやめようと思った理由がある。
出身校である、桐蔭学園サッカー部での引退試合を終えた翌日、私は腰痛で立つことさえできなくなってしまった。中学の時に腰椎分離症と診断されて以来、腰痛と付き合って生活してきた。しかし、立てなくなったことは一度もなかった。病院に行き、MRIを撮ると、今度は腰椎椎間板ヘルニアだと診断された。右下半身に神経痛や痺れが出てしまい、寝返りを打つだけでも激痛が走る毎日を過ごしていた。しかし、そんな時でも、グラウンドからはボールを蹴る音、選手やスタッフ陣の声が聞こえていた。高校サッカーを不完全燃焼で終えてしまった自分が、(高校の話をすると、何千字にもなってしまうので省略させていただきます。)このまま後悔せずにサッカーをやめれるはずがなかった。
入部後の2ヶ月間、薬での治療とリハビリをした後、復帰することができた。しかしこれまで、ヘルニアを理由に計4回離脱し、その度にリハビリ生活を余儀なくされている。毎日薬を飲み、いつ痛みが襲ってくるかわからないこの状況で、なぜ自分はサッカーを続けているのか。この問いについて、これまで何度も考えたことがあるが、自分の中ではっきりした答えが出ていない。しかし、逆にどうしたらサッカーをやめるのか、この問いに関してははっきりとした答えがある。
私は、サッカーをしていて「悔しい」と感じることがなくなったら、それがやめるべき瞬間だと思っている。
この1年間、公式戦出場はわずか数試合。下のカテゴリーなのにも関わらず、試合に出れない自分に腹を立てたこともある。夏、急にトップチームの合宿に呼ばれて試合に出場したが、多くのチャンスを無駄にし、何もできずに終わった時は心底落ち込んだ。ヘルニアが再発して自宅療養中も、見える位置で部員が練習や試合をしているのに、身動きが取れない無力感を何度も味わった。どれを切り取っても常に悔しさを感じてきた。だがその悔しさを晴らすために、その状況から脱するために、行動にうつしたことがあっただろうか。むしろ、ヘルニアや怪我を理由にその悔しさや現実と向き合うことなく逃げていた。悔しいと感じるのは当たり前のことで、そこから次のアクションを起こさなければ変わることなんてできない。誰でも少し考えればわかるような当たり前のことが、自分はできていなかったのである。そんな私に、父からある写真が送られてきた。そこには
「心が変われば態度が変わる。
態度が変われば行動が変わる。
行動が変われば習慣が変わる。
習慣が変われば人格が変わる。
人格が変われば運命が変わる。
運命が変われば人生が変わる。」
こう書かれていた。この言葉をご存知の方も多くいるだろう。当たり前のことのように思えるが、言われてみれば確かにそうだ。しかし私は、心が変わっているだけで、態度も行動も習慣も、何も変わっていなかった。そう気づいた時には既に大学1年目は終わっていた。何気なく過ごしてしまった貴重な時間はもう戻ってこない。
残り3年間、これまでと同じように多くの悔しさを味わうだろう。そして、ヘルニアが再発しまた離脱することだって十分あり得る。怪我を理由に逃げ続けるのか、自分自身や状況、他者からの評価を変えるために行動にうつすのか。引退を迎える時に、4年間を振り返って「悔しさ」を感じず、サッカー人生を終えるために、態度を変え、行動を変え、習慣を変えて、できることを今日から積み重ねていきたいと思う。
また、いつも応援してくれる家族を含め、支えてくれている方々の期待に応え、恩返しがてきるように精一杯努力していきたい。
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