青山学院大学サッカー部オフィシャルサイト

『手のひらに残っていたもの』/栗原滉
『手のひらに残っていたもの』/栗原滉


「大学サッカーで得たものは何ですか?」


これは僕が就活で何度か聞かれた質問です。

大学サッカーをしている皆さん「大学で部活を続ける意味」、「大学サッカーで得たもの」これらは大学サッカーの永遠のテーマですよね。
今回卒業ブログということで僕も「大学サッカーで得たもの」について書きたいと思います。


皆さんこんにちは。
青山学院大学4年の栗原です。

卒業ブログということで、少々長くなりますがお付き合いいただけると嬉しいです。

このブログでは、以下の項目について書かせていただこうと思います。


1、サッカー人生で得たもの
2、引退した今の感情


ハンカチを用意してください。
涙なしにはこのブログを見ることはできません。

準備はいいですか。
長々と書いても仕方ないので始めましょう。




ウケを狙ってバルサの練習着を着ていった大学での初めて練習。大すべりしたあの日から、もう引退を迎えてしまいました。
あっという間の4年間でした。


感想としては、正直自分にとって悔いが残る4年間でした。
「関東リーグに出場する」という目標を掲げておきながら、トップチームにも関われなかったし挙げ句の果てに怪我で半分ちょいしかサッカーをすることができませんでした。
悔しいです。クリリンがフリーザに殺られた時の次に悔しいです。
高校までも不完全燃焼。大学でも目標を達成できず。

では、そんなサッカー人生を通して僕は何を得たのか。
約20年間の時間を費やして何が残ったのか。

引退を近くしてずっとこのことについて考えていていました。
そしてようやく気づきました。

膨大な時間を費やしたサッカーから何を得たのか。



その答えは、手のひらに残った「砂金」です。



何を言っているんだ、バカかと。砂金とはなんぞやと。そう焦らないでください。

浪人生時代に出会った本の中に太宰治の『正義と微笑』っていう本があるんですけど、その中で勉強することの意味について書かれていたんですよね。

良いことが書かれてるんで、本の一部をちょっと紹介させてください。


「勉強というものは、いいものだ。代数や幾何の勉強が、学校を卒業してしまえば、もう何の役にも立たないものだと思っている人もあるようだが、大間違いだ。植物でも、動物でも、物理でも化学でも、時間のゆるす限り勉強して置かなければならん。日常の生活に直接役に立たないような勉強こそ、将来、君たちの人格を完成させるのだ。何も自分の知識を誇る必要はない。勉強して、それから、けろりと忘れてもいいんだ。覚えるということが大事なのではなくて、大事なのは、カルチベートされるということなんだ。カルチュアというのは、公式や単語をたくさん暗記している事でなくて、心を広く持つという事なんだ。つまり、愛するという事を知る事だ。学生時代に不勉強だった人は、社会に出てからも、かならずむごいエゴイストだ。学問なんて、覚えると同時に忘れてしまってもいいものなんだ。けれども、全部忘れてしまっても、その勉強の訓練の底に一つかみの砂金が残っているものだ。これだ。これが貴いのだ。勉強しなければいかん。そうして、その学問を、生活に無理に直接に役立てようとあせってはいかん。ゆったりと、真にカルチベートされた人間になれ!」


長くてすみません。
是非皆さんにもこの一節を、一字一句省かずに読んでもらいたくて載せました。

卒業ブログで太宰治の本を紹介するなんてお前かっこつけるなというツッコミが聞こえてきました。
別に普段から文豪の本を読みまくっているわけではないです笑。
この本は浪人時代に先生から教えられてたまたま出会いました。


話を戻します。
ここで太宰は勉強することはカルチベートされた人間になること、つまり心を広くもつことに繋がると言っているのですね。
もっと簡単に言うと、勉強すると人として成長できるよってことでしょうか。エゴイストになってはいけないと。

浪人時代、勉強をする意味について悩んでいた僕は、この一節を読んだ時スッと腑に落ちた感覚になったのを覚えています。


そして、引退を近くしてこのことはサッカーにも言えると感じるようになりました。

サッカーって終わってしまえば、将来社会人として役に立つことなんてほとんどありません。確かに、草サッカーを通して上司や後輩、取引先と仲良くなれるといったことはあるかもしれません。ですが、20年間費やして得たトラップ・パス・シュートの技術、体力、フィジカル、サッカーIQなど膨大な時間を費やして得た能力のほとんどは役に立ちません。

では、約20年間のサッカーを通して僕に残ったものは何か。

「砂金」です。
手のひらに残った一つかみの「砂金」なんです。

これです。これが貴いのです。

今までの僕がこのブログを読んでいたら「なんだコイツ」と思っていたでしょう。
僕は結構冷めてる方なのでこの文章を見ていたら、気持ち悪いなと思っていたと思います。
ただ、引退してみてこの感覚が少し分かってきた気がします。


抽象的でウザいのでもう少し具体的に「砂金」について深掘りますね。

僕にとっての「砂金」とは、
サッカーを通して経験する、目標をたてること、それに向かって努力を重ねること、成果を出すこと、失敗に落ち込むこと、失敗から学ぶこと、考え改善をすること、仲間と励まし合うこと、仲間と喜び合うこと、

その過程の中で僕の中にたまっていたもの、僕の中で腑に落ちた本質、努力の結果がどうであれ一生残るもの。これが「砂金」です。

これは恐らく、部活でなければ、本気で取り組んだものでなければ得られなかったものだと思います。
太宰治の言葉を借りるならば、僕はサッカーを通してカルチベートされ、少しは広い心を持った人間になることができたと思います。

どうしても抽象的になってしまって言語化しきれず申し訳ないのですが、この感覚なんですね。少しでも同じ感覚を持っていただけたら嬉しいです。


後輩の皆、将来役に立たないからといってサッカーを生半可で終わらせないでほしいと思います。たとえサッカーのスキルはなくなってしまっても、全力でやった先に必ずあなたにとっての「砂金」が残るからです。今まで全力でやれていなかった人も遅くないです。今からでも変化できたらそれだけで貴いことだと僕は思います。

自分と仲間と向き合った分、それぞれの「砂金」があなたの中に残るはずです。



そんなこんなで大学サッカーを終えた自分ですが、サッカー人生を振り返るとやっぱり悔いしかありません。僕は普段、喜怒哀楽をあまり見せないタイプなのですが、最後なので今の気持ちを綴りたいと思います。

プロを目指してサッカーを始めたのにその夢は叶えられませんでした。おまけに高校サッカーにも出られず、大学ではトップチームの試合にも絡めずサッカー人生を終える。悔しいです。悔しくて悔しくて仕方がありません。
華々しいサッカー人生を歩んで、もっとちやほやされたかったです。高校サッカーでテレビに出たかった。関東リーグで良いプレーしてTwitterで騒がれたかった。自分の活躍をインスタで自慢したかった。やりきれなかったことだらけです。

サッカー人生を通して僕は傷つき続けました。身も心も傷ついて傷ついて傷つきまくりました。数えきれない回数、時間、嫌という程、一生分傷つきました。
ずっとプロを目指していたのに、目の前の試合にも出られない、怪我でサッカーさえできていない自分が嫌いでした。

客観的に見ればそんな経験をしている人はごまんといて、自分だけが悲劇的に感じているだけかもしれないけれど、僕には耐えられないほどでした。

でも、そんな自分でも誇れることがあります。

それは苦しみと向き合った時間。

本来は胸をはれるようなことではないけれど、自分の中では誇れるものです。

自分と向き合った時間、遠回りした時間、傷ついた時間。それらは僕を強くしてくれました。この時間はきっと将来何かに役立ってくれると信じています。


こんなこと言ってるけど、僕はサッカーが大好きです。
1日3試合見る日もあるし、戦術も好きだし、クラブ経営について調べたりするし、サッカーにまつわること全部見てしまうほどサッカーが好きです。

こんなにも素晴らしいスポーツに巡り合えて良かったです。
思い描いていたサッカー人生ではなかったけど、楽しかったです。


サッカーよ、ありがとう。




そして最後に感謝を述べたいと思います。
これまで関わってくれた先輩、後輩、スタッフ、マネ、トレーナー、これまで関わってくださった全ての人に感謝をしたいと思います。本当にありがとうございました。

そして同期、お前ら最高だよ。練習後のボール回し、バー当て、だべってる時間、昼飯、日夜、飲みの後の磯村家、皆んなと過ごした全ての時間が最高でした。こんなおじさんを受け入れてくれて本当にありがとう。


最後に家族
まずは色々と迷惑かけてごめんなさい。両親の支えがなければここまでこられませんでした。ありがとうございます。書きたいことがいっぱいありすぎるので、続きは卒業アルバムで書きたいと思います。

まだまだ感謝の思いを述べたいのですが、それぞれ書きたいことがありすぎるので、続きは「感謝の気持ち」で書こうと思います。


長々と書いてしまって申し訳ないですが、これで終わりたいと思います。


これからの人生でも自分だけの「砂金」を集めていきたいと思います。

ありがとうございました。

  
2022/11/16 11:46
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